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僕とポーク/ほしよりこ

   

僕とポーク
僕とポーク

text by yabuuchi
流行りものには疑ってかかるアマノジャクなので、かつて『きょうの猫村さん』が流行ったとき、長らく手を出さなかった。だって、猫だし。だって、猫なのに家政婦だし。だって、ただのほのぼのマンガじゃないっぽいし。アマノジャク的に、流行にのりたくはないんだけど、読んだら流行にのらざるを得ないんじゃないかという気がして手が出せなかった。でも3年ほど前、ついに『きょうの猫村さん』を買ってしまった。

それ以来、今も連載中のWebサイト「猫村.jp」に行っては、日々更新される『きょうの猫村さん』をいそいそ読むようになった。一昨年から家のカレンダー は「きょうの猫村さん 卓上カレンダー」である。そして、年末に出る「猫村さんお楽しみボックス」を密かに楽しみにしている。ここだけの話だが、ネットでレシピを探して、ネコムライス(エッグのせ)もつくってみた。詰まるところ、案の定というか何というか、しっかり猫村さん好きになってしまったのであった。

そんなこんなで『僕とポーク』の存在も以前から知っていた。知ってはいたんだけど、これまたずっと読まずに放置してきた。この本のキャッチは、「これは、もはや文芸である」とか何とかだった。そんなこと正面切って言われたら、出かけた手も引っ込むというものだ。そもそも『僕とポーク』って、なんだそのタイトル は。『僕と豚』ではなく、『僕のポーク』でもなく『僕とぶーちゃん(結局読んだから知っているけど、主人公の少年が飼う豚の名前が「ぶーちゃん」である)』でもなくて『僕とポーク』。「僕」と「ポーク」が、並列。しかも「ポーク」。人が豚のことを「ポーク」と言うとき、それはもちろん、食べるための肉を指す。表紙では、飼い主の「僕」が「ポーク」をニコリともせず、むしろ眉間にしわを寄せてだっこしている。……不穏である。
でも、そんな不穏を超えて、やっぱり読んでしまった。そして、果たして『僕とポーク』は面白かったのだった。

表題作の話は確かに「僕とポーク」だ。僕とポークを巡る物語。ちょっとどこかズレてる、でも「そういうのあるなあ、分かるなあ」と思わせる、登場人物や彼らを取り巻く状況が面白い。子どもの頃、ご飯を残して「世界の恵まれない子どもたちは…」と親や先生にたしなめられたり、一度始めてしまったことを止めるきっかけもなく続けてしまったり、大学に入ったら何の活動もしてないテニスサークル風サークルがあったり。紋切り型ではない、でもいつかどこかで見聞き、 もしくは体験した一筋縄ではいかない人生。ひたすらに淡々と、切ないおかしみを醸しながら、みんなが毎日を生きている。矛盾してても理解できなくても、人生は捨てたものではない、と思わせてくれるような作品だった。

一緒に収録されてる短編「たろちゃん」も好き。憧れの近所のお兄ちゃんと友達になりたい、たろちゃん(4才)の健気さがよかった。子供と大人たちが分かり合えない瞬間、分かり合える瞬間、どっちも切ない。
「文豪の苦悩…」は、ほしよりこさんらしいといえばらしい一編。『きょうの猫村さん』でいえば、犬神家とその周囲をウロウロする人間たちの様子、みたいな。
「鳥」は……、ただただ鳥であった。超短篇で脱力。

さて、『僕とポーク』を読んでしまったら、あと気になるほしよりこさんの本は『逢沢りく』だ。出版当時、『逢沢りく』もそれなりに平積みにされていた。上下2巻。手塚治虫文化賞も受賞して、ちらほら見かけるる評判も悪くなくて、そしてやはり未読である。あの本が出てからもう半年以上経つ。そろそろ読んでもいいかなあ、とアマノジャクなりに考えている。

 - コミック

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